メンバーズ・ボイス

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2020.9.1
自分らしい生き死にを考える会 副代表
東京慈恵会医科大学附属柏病院 総合診療部 三浦靖彦


生命維持治療を拒否する患者さんへのアドバンス・ケア・プランニング(ACP)って、どうしたらよいのでしょうか?


 京都で神経難病:ALSの患者さんが、安楽死を求め、主治医でもない医師二人が致死的な薬剤を投与して死に至らせるという、悲しい事件が起こってしまいました。この事件を発端に、生命維持治療を拒否する患者さんに対するACPって、どうしたらよいのですか?と最近聞かれることが多くなりました。

「将来の具体的な医療行為をどうしたいか?つまり、呼吸器をつけるのか?栄養補給はどうするのか?心肺蘇生は希望するのか?等」を聞いても、答えはいつもNoであり、話が続かなくなってしまうことでしょう。実際に、ある神経難病の患者さんから、「呼吸はつけないとすでに決めて、何度も表明しているのに、訪問してくるたびに、各職種から「呼吸器はつけないの?胃ろうはどうするの?」と繰り返し聞かれ、いい加減にしてほしい、放っておいてほしいと感じていた」という発言もあったりしました。つまり、具体的な医療行為を聞くだけであれば、思考停止に陥ってしまうことが予想されます。

 胃ろうや呼吸器をどうするかという、医療行為のことばかりにとらわれず、ACPの基本部分に焦点を当てて、「患者さんの今まで生きてきた生活史(ライフヒストリー)を聞き、今後の生活についての希望、思い残したこと、親しい人たちに伝えておきたいこと」などを丁寧に聞き取ること(これは、ディグニティ―セラピーにも通じます)、つまり、私の生き方連絡ノートの前半部分の作成に十分時間をかけ、傾聴・共感を繰り返しながら、この作業を継続することにより、その会話と、患者さん自身が自問自答する中から、たとえ残された時間が短いとしても、その時間を有意義に過ごそうという思いにつながる可能性があるのではないでしょうか。また、一緒に考えていく過程で、自分の回りに、たくさんの支援があることを実感でき、生命維持治療を受けながらの生への希望を再構築できる可能性があるのではないかと考えています。このプロセスが、「望ましい協働意思決定:Shared Decision Making, Collaborative Decision Making」の目指す形でもあり、「患者と家族の幸福の最大値を求める」医療・ケアスタッフの姿勢ではないかと考えています。